2024年1月20日更新
僕は2010年1月から野球のプロフェッショナルコーチとして長年プロアマの選手たちを支えてきました。その中でよく選手たちに伝えていることがあるのですが、それは「プロテインに頼りすぎるな」ということです。頼りすぎるな、と言うと少し控えめな表現なのですが、できればプロテインには手を出して欲しくない、というのが僕のプロコーチとしての正直な意見です。
プロテインには筋肉を手っ取り早く大きくできるというメリットがあるわけですが、果たしてどれだけの野球選手がプロテインのデメリットを理解した上で、毎日プロテインを摂取しているのでしょうか?そうです、プロテインにはメリットがある反面、大きなデメリットも存在するということを忘れてはいけないのです。
デメリットのお話をする前に、まずは僕個人のお話を少しだけ。僕はヴィーガンなので、肉や卵などは一切口にしません。タンパク質は豆などの野菜からしか摂っていませんが、身長175cm、体重69kg、体脂肪率9%で、日々のトレーニングで腹筋はもちろん6つに割れています。しかしプロテインはまったく飲んでいません。プロテインに頼らなくても、しっかりとした体作りは普段の食生活だけでも十分に可能なんです。
プロテインというのは、牛乳などに含まれるタンパク質だけを抽出しパウダー状にしたものです。牛乳を温めると表面に膜ができますよね?あの膜がプロテインの原材料となります。そしてその膜だけを食べても美味しくないですよね?誕生日が80年代以前で運動部だった方なら覚えているかもしれませんが、昔のプロテインというのは本当に不味かったんです!
さて、そのプロテインのデメリットですが、結論から言います。腎臓への負荷が非常に大きいんです。特に未成年選手がプロテインを日常的に摂取し続けてしまうと、大人になってから内臓の不調を起こすケースが多くなります。
実はプロ野球選手の中にもそういう選手がいるんです。アマチュア時代にプロテインで体を大きくし、プロ入り後に気付かぬうちに内臓が弱くなっていき、天才バッターとも呼ばれていたのに怪我によって思うような活躍ができなかった右投げ左打ちの巧打者が。彼はもともと捕手としてプロ入りしたのですが、後に一塁手にコンバートしても大怪我が絶えない選手でした。
大人になると会社などで健康診断を行う機会も増えると思います。しかしプロテインによって内臓を壊していたとしても、健康診断の検査結果ではそれを知ることはできないんです。
プロテインやアミノ酸というのは、摂取し過ぎると腎臓を壊してしまいます。健康診断で腎機能を診る時は「血清クレアチニン」の値を見て判断するのですが、プロテインやアミノ酸によって壊されてしまった腎機能の状態は、実は血清クレアチニン値には現れないんです。つまりプロテインやアミノ酸によって腎臓を壊していたとしても、普通の健康診断で引っ掛かることはないため、本格的に悪化するまで気づかれないケースが大半なんです。
プロテインやアミノ酸で腎臓を壊している場合、「尿アルブミン」の値に変化が現れます。しかし尿アルブミン値を測定してくれる医療機関は少ないらしく、一般的には、プロテインやアミノ酸の摂取によって腎臓を壊していたとしても、本当に体調が悪化するまで気づかれないケースがほとんどなんです。そして最悪の場合、健康状態が下り坂に差し掛かってから人工透析が必要になってしまうケースもあります。
腎臓というのは毒素を濾過する器官です。タンパク質というのはプロテイン、肉、魚関わらず分解時に尿素窒素などの毒素を排出します。腎機能が低下してしまうとこの毒素を体外に排出することができなくなり、尿毒症となり、死に至るケースがあります。
僕は2010年以降、日常的にプロテインやアミノ酸を摂取している選手に対しては、必ず減らした方が良いとアドバイスしています。本音はすぐにやめるべきだと思うのですが、しかしいきなりそんなことを言って理解してくれる選手も少ないと思いますので、「減らした方が良い」という表現に留めています。
パウダー状のプロテインというのは完全に人工的な食品です。人工的な食品が体に良いわけがないんです。例えば少し知識がある方なら、人工甘味料が含有されていたり、遺伝子組み換えが行われている食品を口にすることはありませんよね?それと同じで、タンパク質も人工食品から摂取すべきではないんです。僕のようにヴィーガンになれとは言いませんが、肉や魚、卵や野菜からも十分なタンパク質を摂取することは十分可能です。
例えば現役時代に224勝を挙げた工藤公康投手は、プロテインは一切飲まない選手でした。しかしそれでも、引退直前であっても腹筋1000回を軽くこなしていましたし、30年近くプロ野球の第一線で投げ続ける強い体を作ることができていました。
筋肉を増やしたいならトレーニング直後30分以内のプロテイン、疲れをサッと抜きたいならアミノ酸、という知識は、プロアスリートじゃなくても、駅前のジムに通っているだけの一般の方でも広く知られている知識です。しかしその受け売りの知識や、プロテインメーカーの宣伝文句を鵜呑みにしてはいけません。そもそもプロテインメーカーが、プロテインのデメリットを口外するはずなどないんです。
多くのプロ野球選手は今でもプロテインにはデメリットなどないという考え方で、日常的にガンガン飲み続けています。しかし古き良きプロ野球を知っているオールドファンであれば、90年代以前の選手に比べ、プロテインをガンガン飲み始めた2000年代以降の選手の方が怪我に弱いと思いませんでしたか?科学的にはプロテインの摂取によって腎臓を壊し、尿アルブミン値に異常が生じてくると、タンパク質分解時の毒素を体外に排出できなくなります。そして毒素が溜まった体は当然怪我もしやすくなるわけです。
しかし上述したように健康診断では尿アルブミン値まで診てもらえることはありませんので、気づいた時にはすでに疾患していることがほとんどなんです。これがプロテインを日常的に摂取し続けた際のデメリットです。プロテインは一見体を強くしてくれているようで、実は体を壊してしまう人工食品なのです。
もしこの記事の内容がウソだと思うようでしたら、まずは一定期間プロテインを一切摂取していない状態で尿アルブミン値をお医者さんに診てもらってください。そしてその後日常的にプロテインを摂取し続けた後で、もう一度尿アルブミン値を調べてもらってください。数値は必ず悪化しているはずです。
筋肉を大きくできたとしても、腎臓を壊してしまっては元も子もありません。筋肉がモリモリじゃなくても死ぬことはありませんが、腎臓を壊すと命に関わります。だからこそ僕はプロフェッショナルコーチとして、日常的にプロテインを飲んでいる方にはその量を減らして欲しいのです。そして本音としては、今すぐプロテインの摂取はやめて欲しいのです。
どうしてもトレーニング直後にタンパク質が欲しいようでしたら、例えばゆで卵を持参してトレーニングを行えば良いと思います。また、食事では木綿豆腐を1丁食べると良いと思います。タンパク質は絹ごし豆腐よりも木綿豆腐の方が豊富なのでオススメです。僕自身、木綿豆腐は保存料などが一切入っていないものを毎日2丁は食べています。
ゆで卵に関しては、黄身を食べ過ぎるとコレステロール値が上がる体質の方もいるので、コレステロール値が気になる方は注意が必要です。しかしこれは体質によって違い、黄身を食べてもコレステロール値にまったく変化が現れない体質の方もいますので、気になる方に関してはかかりつけのお医者さんに相談されてみると良いと思います。
さて、最後にプロテインを日常的に摂取した際のもう一つのデメリットもお伝えしておきたいと思います。これはプロテインというよりは、タンパク質そのものに関するお話なのですが、プロテインなどでタンパク質を日常的に大量に摂取してしまうと、骨に悪影響を及ぼすというエビデンスも海外の医学論文で発表されています。
つまりプロテインを日常的に摂取してしまうと腎臓だけではなく、骨にもデメリットが生じてしまうということになります。それなら「カルシウムのサプリを飲めば良い」って思いましたか?でもカルシウムを効率よく吸収するためには、ビタミンDが必須になります。プロテインで骨を弱くして、カルシウムサプリで補強しようとして、その結果ビタミンDのサプリも必要になって、と、もう切りがありませんね(苦笑)
さて、この記事を読まれた上であなたならどちらを選びますか?腎臓や骨にダメージを与えてまでプロテインに頼るのか、それとも工藤公康投手のようにバランスの良い普段の食事で、健康的に体づくりを行うのか。どちらを選択されるのかは、もちろんあなた次第です!
最近のプロテインはとても美味しいものが増えましたが、スクラロースなどの人工甘味料が添加されたプロテインは選ばないようにしてください。体は甘いものを食べるとエネルギーとして使える糖質が補給されたと感じます。しかしスクラロースなどの人工甘味料は甘いだけでエネルギー転換することができません。
甘いものを口にしたのにエネルギー補給ができないと、体はもっと甘いものを欲しがるようになります。するとお菓子や菓子パンなどの間食が増えるようになり、体脂肪率が跳ね上がる太りやすい体質になってしまいます。プロテインに美味しさを求めるのであれば、ステビアという植物性のノンカロリー甘味料が使われたプロテインを選ぶようにしましょう。
カラギーナン自体は海藻由来なので無害なのですが、カラギーナンはプロテインパウダーの重量を重くするためだけに添加されています。つまりカラギーナンが入っているということは、かさ上げされた低品質のプロテインだということです。
固形コーンシロップも糖類の一種でフルクトースと言い、フルーツにも含まれているのですが、フルクトースだけを添加した時点でそれはもうフルーツではありません。フルーツにも含まれているから体に良いというわけではないので注意が必要です。やはりプロテインは糖類無添加のものを選ぶのがベストです。美味しくはありませんが。
実は人工香料を商品の成分表に詳しく書かなければならないという法的義務はありません。そのためメーカーは香料に関する詳細は可能な限り消費者に伝えることはしません。人工香料というのはジャンクフードを美味しく感じさせるための匂い付けとして使われているもので、非常に不健康な香料です。なので人工香料が添加されているプロテインはジャンクフードと同類と思った方が無難です。
トレーニングをした後のプロテインは28〜30gのタンパク質摂取が科学的には理想とされています。その理由は単純で、それ以上のタンパク質を摂取しても筋肉はそれを吸収することができないためです。つまり「たくさんトレーニングしたから今日のプロテインシェイクは2倍にしよう!」と思って飲んでも、体は30g以上のタンパク質を受け付けませんので、飲み過ぎた分は無駄になってしまうということです。
そしてできればホエイという動物性タンパク質のプロテインよりも、植物性プロテインを選んだ方が内臓への負荷は小さくなります。最近は植物性プロテイン商品も増えてきていますので、プロテインを購入される際は、必ず成分表をチェックしてください。そしてよく分からない成分は購入前に必ず調べて、体の毒になる成分が入っていない商品を選ぶようにしましょう。
さて、上述の通りプロテインには動物性と植物性の2種類、主にWHEYと呼ばれる
プロテインを日常的に摂取する際は、広告の売り文句に任せて何も考えずにただ摂取するのではなく、しっかりとそれぞれの特徴を理解した上で使い分けていくことが大切です。
まず筋肉を増やしたい時はWHEYプロテインが効果的です。一方筋肉を維持したい時は大豆プロテインが有効なんです。どういうことかというと、WHEYプロテインを飲むとあっという間に筋肉を増やすことができるわけですが、WHEYプロテインによって増やしたその筋肉を維持するためには、本当に大量のWHEYプロテインを日々飲み続けなければならないということです。
一方大豆プロテインは筋肉を増やすことに関してはやや苦手で、WHEYプロテインのようにあっという間に筋肉を増やすことはできません。ですが増やした筋肉量を維持することは得意なので、WHEYプロテインのように日々必要以上に摂取しなくても筋肉量を維持しやすくなります。
つまりプロテインの効果的な使い分け方とは、筋肉を増やしたい時はWHEYプロテインを摂取し、欲しいだけの筋肉量を得られたら大豆プロテインに切り替えるのが効果的というわけです。そしてこのようにWHEYから植物性に切り替えることによって、内臓への負荷も軽減させることができます。
近年は大豆プロテインの選択肢も増え、味もかなり美味しいものが多くなりました。ちなみにヨーロッパなんかではヴィーガンプロテインがどこででも売られていて、各国の五輪チームの公式プロテインや、アンチドーピングプロテインとしても指定されていることが多いんです。
このコラムをご覧いただいた後は、ぜひ動物性プロテインと植物性プロテインを上手に使い分けて、小さな負荷で効率よく体づくりをしていくようにしてください。
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