最終更新日:2020.05.28

【変化球の打ち方】目線を傾ければ変化球の打ち方はとっても簡単!

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変化球の打ち方はコツさえつかめばとっても簡単!

今回のスラッガー養成コラムでは、カーブやスライダーなどの変化球の打ち方に関するコツを詳しくお伝えしていきたいと思います。小中学生や草野球選手で、変化球を打つ練習をガッツリしたことがない初級レベルの選手は特に、変化球を打つことが難しく感じられると思います。「変化球は投げてくるなよ!」と弱気になりながら打席に立っている選手も多いかと思います。

ちなみに弱腰のバッターはディフェンシヴ・バッターと呼ばれ、打つ気満々のバッターはオフェンシヴ・バッターと呼ばれます。もちろん試合ではオフェンシヴ・バッターの方がたくさんヒットを打てるようになります。

さて、変化球を打つのはコツさえわかってしまえばまったく難しいことではないんです。むしろ球速が遅い分ストレートよりも打ちやすかったり、変化球にはトップスピン要素が少ない分ボールに重みがなく、長打を打ちやすくなります。

ではなぜ多くのバッターが変化球打ちを苦手としているのか?!

日本特有の原因として考えられるのが、子どもの頃からバットを地面に対して水平に振る練習をさせられる点です。バットを地面に対して水平に振る癖をつけてしまうと、真ん中から高めの甘いストレートしか打てないバッターにしかなれません。ボールの軌道に対して水平で振っていくレベルスウィングは成績が上がる正しい打ち方になるわけですが、地面に対して水平に振ってしまっても打率が上がることはありません。

変化球の打ち方を詳しく解説する前に、まずは正しいヘッドの高さを理解しておく必要があります。ヘッドが下がってしまうのは良くない、ということは誰もがご存知だと思いますが、「ヘッドが下がる」とは、軸とバットが直角の関係ではなくなる形のことを言います。軸とバットが直角でなければ、ヘッドは下がっていても上がっていても力強い打球を打つことはできませんし、バットを出したいところに正確に出していくこともできません。

ミート力と飛距離を同時にアップさせていくためには、軸とバットを直角の関係にしてバットを振っていく必要があります。ちなみに軸は、初級・中級レベルの方はだいたい背骨が軸だと考えてもらって良いと思います。厳密にはトップハンド側の肩と非軸脚側の股関節を結んだラインが軸になり、上級者になるとこの軸が体の外に飛び出し、爪先から頭を結んだラインをフルで軸として使えるようになります。ですが初級・中級レベルの選手はあまり難しく考えず、ひとまずは背骨が軸だと考えてしまって良いと思います。

腕力と遠心力に頼ってバットを振るとヘッドは必ず下がるって本当?!

本当です。腕力に頼ってバットを振って、トップハンドの肘(右打者なら右肘、左打者なら左肘)が体から遠ざかるほどスウィングがヘッドの重さに負けてしまい、ヘッドはどんどん下がってしまいます。ヘッドを下げないためには、トップハンド側の肘が体から遠ざかっていない、ということが大きなポイントとなります。

また、バットスウィングは遠心力ではなく求心力によって作っていく必要があります。遠心力に頼れば頼るほどバットが遠回りしやすくなり、アウトサイドインという、ボールの外側を打ちに行くような絶対にミート力が上がらない打ち方になってしまいます。逆に求心力を使って振ると、バットを遠回りさせようとしても、させられなくなります。つまりミート力が上がるインサイドアウトの形でしか打てなくなるんです。

剣術には居合術という技術があります。これは刀を鞘から抜きながら相手に攻撃を仕掛ける剣術になるわけですが、この居合術はまさにバッティングでいうところのインサイドアウトの形になります。ちょっと物騒ですが、重心を低くしてしっかりと踏ん張り、刀を鞘から抜きながら相手に斬りかかっていくというイメージで打ちに行くと、しっかりとしたインサイドアウトになりやすいので試してみてください。

地面に対してのレベルスウィングを癖づけるとミート力は絶対に上がらない!

すでに上述していますが、地面に対して水平に振る練習をしても意味はありません。ボールの軌道に対して水平に振る練習をする必要があり、その動作のことを本当の意味でレベルスウィングと呼びます(もしかしたらパラレルスィングと呼んだ方が正確かもしれませんが)。打ちたいのは地面ではなくボールなわけですから、やはりボールの軌道にしっかり入っていけるスウィングを身につける必要があるわけです。

下の写真を見てみてください。これは軸を立てて、バットを地面に対して水平に振った形を再現したものです。

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両眼を結んだラインとバットのスウィングプレーンは緑色で一致していますが、一番大事な変化球の赤い線で描いた軌道とは一致していません。両眼を結んだラインとスウィングプレーンの両方が、カーブやスライダーなどの変化球の軌道と一致していなければ、当然バットで変化球の軌道を正確に捉えていくことはできません。

変化球打ちを苦手とする多くの初級・中級レベルの選手がこの打ち方をしてしまっていると思います。この打ち方をしてしまうと、真ん中高めに来た本当に甘いボールしか打てなくなってしまいます。

踏ん張りが弱く、腕力に頼ってバットを振ってしまうとこの形になりやすいので注意が必要です。また、体重移動をして打った場合もこの形になりやすく、変化球に泳ぎやすくなります。体重移動をして非軸脚側の膝(右打者の左膝、左打者の右膝)が少しでも曲がってしまうと、上半身は少なからず必ず突っ込んでしまうため、変化球に簡単に泳がされてしまいます。

また、当然ですがこの形を覚える素振りをして、この形で打つことを目的とした練習をしてしまうと、外角低めに逃げていく変化球にバットがまったく届かなくなってしまいます。バットが届かなければボールを前に飛ばすことさえできません。

素振りはストライクゾーンを4分割、9分割、16分割にして、軸とバットの直角を崩さずに繰り返そう!

①の写真のような形にならないためにも素振りをする際は、どの高さのどのコースを振っても軸とバットの関係を直角から崩さないようにするという意識が必要です。最初のうちはストライクゾーンを4分割してその練習をし、慣れてきたら9分割、16分割と難易度を上げながら振っていくとその素振りを、成績向上に繋がる効果的な素振りにしていくことができます。

しかしバットを地面に対して水平に振り続けてしまうと、例えば毎日1000回素振りをしたとしても、なかなか成績が上がらないただの筋トレにしかならない素振りになってしまいます。努力は嘘をつかない?いいえ、そんなことはありません。正しい動作を身につけるための練習になっていなければ、誰よりも長時間練習したとしても成績を上げることはできません。

ヘッドが下がるとバットが外角低めに届いても強い打球にはならない

バットを地面に対して水平に振る練習をしてしまう選手のもう1つの特徴として、低めのボールにバットを合わせていく時、手だけでスウィングプレーン(バットを振る軌道)を下げようとしてしまうことが挙げられます。下の写真のようにヘッドが下がってしまうと手首を力強く使うこともできず、リスト(手首)を利かせられないバッティングになり、バットがピッチャーのボールに押し返されるようになります。

すると引っ張った方向へのボテボテのゴロや、反対方向へのポップフライが目立つようになり、仮に空振りをしなかったとしても打率が上がっていくことはほとんど考えられなくなります。

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ヘッドを下げた上の写真だと、変化球の軌道とスウィングプレーンは一致していますが、目のラインは一致していません。この形になると力強い打球を打てなくなるだけではなく、例えバットを変化球が落ちてくる外角低め付近に持っていけたとしても、両眼を結んだラインが変化球の軌道とスウィングプレーンに一致していないため、本当にバットを出したいポイントにバットを出せなくなってしまいます。

すると変化球を引っ掛けて内野ゴロゲッツーというパターンで、チャンスを一瞬で潰してしまうピッチャーに優しいバッターになってしまいます。また、フライを打ったとしてもヘッドが下がっているとボールの下面を撫でやすくなり、フライが外野まで届く可能性もほとんどなくなります。つまりタッチアップさせ狙えない内野フライにしかならない、ということです。

変化球の軌道とスウィングプレーンは一致、でも目のラインがそれに対して平行になっていないこの打ち方も、やはり変化球を打てない選手の特徴として挙げることができます。

目線を傾ければ変化球は簡単に打てるようになる!

良い形の説明をする前に、まずは良い形を再現した下の写真を見てみてください。

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変化球の軌道、スウィングプレーン、両眼を結んだラインがすべて一致しています。この形こそが簡単に変化球を打つことができるフォームです。

例えば埼玉西武ライオンズの栗山巧選手などは、このような角度で目のラインを使うことが非常に上手い選手です。そのため栗山選手は打率も高く、全盛期はほとんど空振りをしないバッターでもありました。

変化球を簡単に打てるようになるこのフォームを身につけるためには、まずステイバックというモーションを身につける必要があります。ステイバックとは体重移動はせず、軸脚に体重を乗せ切った状態でバットを振る技術のことです。つまり平たく言うと、体重移動をしてしまうとこの目の使い方はできなくなる、ということです。

日本では野球動作のバイオメカニクスをまったくご存じないボランティアコーチの方々が、経験則だけに頼り子どもたちに体重移動をする打ち方だけを教えてしまうわけですが、体重移動をする打ち方というのはほとんどの選手のケースで、打率と飛距離を低下させる原因になってしまいます。

体重移動をする打ち方を教えるべきではないということに関しては、メジャーリーガーとなった筒香嘉智選手も警鐘を鳴らしています。クラブチームや野球部の監督・コーチたちがもう少しバイオメカニクス(野球動作の科学)を勉強し、体重移動をする打ち方とステイバックという2つの選択肢を示すことができた場合、体重移動をする打ち方を選ぶ方はほとんどいないと思います。

イチロー選手のように普通の選手には真似ができない特殊な目線の使い方をしていて、スウェー(前に突っ込みながら打つ形)しながらもミート力が低下しないバッターを除くと、僕の10年以上のプロコーチとしてのキャリアから言わせてもらえれば、99%以上の選手はステイバックで打った方が打率が上がりやすいと言い切ることができます。そして僕が個別レッスンをしてきた選手たちの打率も実際に上がっていきました。

今回のスラッガー養成コラムのテーマである変化球打ちに関しても、ステイバックによって頭の位置を変えず、両眼を結んだラインとスウィングプレーンを変化球の軌道に一致させていけるフォームを身につけられれば、ストレートよりも遅い変化球を、ストレート以上に打ちやすいボールに変えていくことができます。

例えば単純な話、150km/hのストレートよりも、球速が遅い120km/h程度のスライダーや100km/h程度のカーブの方がより正確にボールを見極めることができます。ボールがよく見える程度の球速の変化球を、目線とスウィングプレーンを変化球の軌道と平行にして打っていくことができれば、変化球は驚くほど簡単に打てるようになります!

首を傾けて3つのラインを平行にしてもまったく意味がない?!

もう一度③の写真を見てみてください。首はまったく曲がっておらず、頭のラインと背骨は綺麗な一直線になっています。この時この形ではなく、軸は①の写真のように立っていて、首を傾げることによって両眼を結んだラインを変化球の軌道に入れていってもあまり意味はありません。この形になると目線とボディスピンの回転軸が一致しなくなるため、バットスウィングの速度が低下してしまいます。

③の写真では背骨とバットがしっかりと直角の関係になっています。この形が重要なのです。しっかりと下半身を踏ん張ってステイバックの形を作り、軸脚側の股関節を屈曲(膝を胸に近づける方向への動作)させることにより、軸を反対打席側に傾けていきます。

この時腰が反ってしまうと体幹を使えなくなり、スウィングにブレが生じるようになるため、腹筋に力を入れ続けられる姿勢で振るように心がけてください。

このように両眼を結んだライン、スウィングプレーン、変化球の軌道をすべて一致させることができると、初級レベルの小学生でも草野球選手でも変化球を簡単に打てるようになります。小学生に関しては変化球を打つ機会というのはほとんどないと思いますが、それでも中学野球に向けて、コーチが投げる変化球を打つ練習をすることはあると思いますので、少年野球に変化球はないからと言ってこの打ち方をスルーしてしまうのではなく、試合で初めて変化球を目にしても戸惑わずにすぐに打っていけるように、小学生のうちからこの良いフォームを身につけておくことが大切です。

ちなみにこの打ち方は変化球だけではなく、上述したようにインサイドアウトで打てるようになるため、ストレートだって簡単に打てるようになります。

ご存知の通り人間の目は横に並んでいるため、縦の変化球に弱いという特性があります。しかし両眼を結んだラインを傾けて使えるようになると、縦の変化球にも強いバッターになることができるんです。スライダーやカーブだけではなく、フォークボールやチェンジアップといった落ちる変化球も打ちやすくなります。

変化球の打ち方に関するまとめ

例えば小学生に今回のコラムの内容を伝えても難しくてなかなかピンと来ないと思います。そういう場合は難しい話はとりあえず省いて、「しっかり踏ん張って、胸を張って反対打席側にお辞儀をしながらボールをよく見て打ってみよう」という感じで伝えてあげてください。この伝え方であれば、低学年であっても動き方を十分に理解できると思います。しかし胸を張り過ぎて腰が反ってしまってはいけないので、そこはコーチや親御さんにしっかりと見守ってあげて欲しいなと思います。

ということで今回は、誰でも簡単に変化球を打てるようになる打ち方を解説させていただきましたが、いかがでしたか?最後まで読んでくださった方は、このスラッガー養成コラムを読んだだけで「変化球を打てる!」というイメージが湧いてきたはずです。ですので鉄は熱いうちに打っておきましょう。このコラムを読み終えたらすぐにバットを持って外に出て、バットと軸の直角の関係を崩すことなく、両眼を結んだライン、スウィングプレーン、変化球の軌道を一致させるイメージで素振りをしてみてください。今日やっておけば明日にはもう、今まで以上に変化球を打てるバッターになっているはずです!

 

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